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AI診断・遠隔医療の診療報酬・保険適用 現場で知っておくべきポイント

Tags: AI診断, 遠隔医療, 診療報酬, 保険適用, 医療政策

はじめに

AI診断や遠隔医療技術の発展は目覚ましく、医療現場への導入が加速度的に進んでいます。これらの新しい技術を日常診療に取り入れることは、医療の質の向上や効率化に貢献する一方で、その導入・継続には経済的な側面、特に診療報酬や保険適用に関する理解が不可欠です。多忙な医師の皆様にとって、これらの制度は複雑に感じられるかもしれませんが、技術を適切に活用し、持続可能な医療提供体制を構築するためには、避けて通れない論点と言えます。

本稿では、AI診断および遠隔医療における診療報酬・保険適用の現状と課題、そして医療現場で知っておくべきポイントについて解説します。

AI診断に関連する診療報酬・保険適用の現状と課題

現在、画像診断支援AIなどをはじめとするAI技術は、医療機器として薬機法の承認を得るものが増えています。しかし、AIそのものに対する独立した診療報酬点数は、確立されていません。AI技術は、既存の診療行為(例:画像診断判断料)を支援するツールとして位置づけられることが多く、その利用料や導入コストは、多くの場合、医療機関が負担する形となっています。

現状の課題

現場で知っておくべきポイント

現状では、AI診断支援システムを導入しても、それ単体で追加の診療報酬を得られるわけではありません。システムの導入コストや維持費用は、医療機関の経営判断として負担することになります。したがって、導入を検討する際には、コストに見合うだけの業務効率化、診断精度の向上による医療の質向上、あるいは患者満足度向上といった間接的なメリットを慎重に評価する必要があります。

遠隔医療(オンライン診療等)に関する診療報酬・保険適用

遠隔医療、特にオンライン診療については、2018年度の診療報酬改定で保険適用が始まり、2020年以降の新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、時限的・特例的な措置が拡大されました。その後、恒久的な制度として見直しが進められ、2022年度、2024年度の改定でその枠組みが明確化されています。

現状

現状の課題

現場で知っておくべきポイント

オンライン診療を導入・実施する際には、厚生労働省が定めるオンライン診療に関する指針や、診療報酬に関する告示・通知を十分に確認する必要があります。特に、算定可能な疾患、初診・再診の要件、情報通信機器の基準、処方に関する制限などを正確に理解しておくことが重要です。また、これらの情報は定期的に見直されるため、最新の情報を常に確認する体制が必要です。保険診療として適切に算定するためには、カルテ記載も通常の対面診療と同様に詳細に行う必要があります。

今後の展望と医師が注視すべき点

AI診断や遠隔医療に関する診療報酬・保険適用は、今後も技術の進展や医療ニーズの変化に合わせて見直されていくと考えられます。

医師の皆様は、これらの技術動向だけでなく、関連する国の政策動向、特に診療報酬や保険適用に関する情報を継続的に収集し、ご自身の診療科や医療機関における影響を予測し、必要な対応を検討していくことが求められます。学会活動や、この分野に特化した情報発信メディアなどを通じて、最新の情報を入手することが有効です。

結論

AI診断および遠隔医療技術は、今後の医療提供体制において中心的な役割を担う可能性を秘めています。これらの技術を現場で有効に活用するためには、技術そのものの理解に加え、診療報酬や保険適用といった経済的・制度的な側面を深く理解し、変化に対応していく柔軟性が不可欠です。

現状ではまだ発展途上の部分も多いですが、今後の診療報酬改定において、これらの新しい技術がどのように位置づけられるかを注視し、自院での導入・活用戦略を立案する際の重要な要素として考慮に入れるべきです。日々の診療でお忙しい中ではありますが、こうした制度面の最新情報を得る努力が、将来にわたる医療提供の質の維持・向上に繋がるものと考えられます。